チームマネジメントのお話

しろくま胡瓜
しろくま胡瓜 |

RCJに参加する上でまず何よりも大切なのはチームメイトの存在です。

コミュニケーションの障壁になりがちなモチベーションの差や技量の差に悩まされている競技者は少なくないのではないでしょうか。事実今回の全国大会でもスケジュール管理の感覚が合わなかったり、チームの方向性の齟齬があってうまくまとまらなかったチームもあったそうです。

僕たちBlendは3月の全国大会でRescue Maze初参加優勝&優秀プレゼンテーション賞を無事GETすることができたのですが、これはチームがまとまっていたからこそ得られた結果です。それぞれが役割を持ち、一極集中することなく上手く分担してロボット製作に取り組めているチームってなかなかないと思います。

この記事では、Blendのチーム集めから全国優勝までにチームマネジメントの面で僕が試行錯誤したことなどを書いていこうと思います。

前提

  • 相方が受験のため2016から続いていたRoot41が解散し、一人になった
  • RCJは一人では出られないため新たなチームメンバーを探す必要がある

僕は2022シーズンまでずっとSoccer Lightweightをやっていたので、Rescue Mazeに関してはルールすら知らない状態からのスタートでした。Soccerと違って好きなだけ光らせてもいいくらいのの情報しかなかったです。

またRescueはSoccerほどコミュニティーが発達しておらず、Twitterなどで情報を集めるのも無理そうな空気感。

などといろいろ悩んでいても何も始まらないので、高専の寮生でRCJに興味ありそうな言動を示していたぽんちょ(機械科)を捕まえて、とりあえずBlendを発足しました。日本語にはちょうど良い表現が常にあるもので、これを俗に見切り発車と言います。

とりあえず公式Twitterとサイト作る

ちゃんとチームが発足した感を出したかったのでチームのTwitterと公式サイトを作成しました。公式サイトはいつものGitHub Pagesでサクッとそれっぽい見た目のものを整えました。

ロゴができたのもこの時期です。チームの一員になったという認識を持ってもらうのが目的です。

公式サイトにBlendのメンバー募集中!みたいなことを書いてTwitterに投稿したら、それをみたsetukaがBlendに入りたいと言ってきたのでメンバーが増えました。(彼はそのためにサッカー部をやめたらしいです)

この時点でメンバーは3人です。

ルンバボーを誘ってみる

ぽんちょと同じ部活に所属しているルンバボーを誘ってみました。彼はちょうどその部活で活動を続行していくことに違和感を感じていたっぽいので、そのタイミングで声をかけてみました。入ってくれることになったのでチームメンバーが4人になりました。

ピザ

まず僕らが何の競技に出るのかを認識してもらうために、ルールを読もうの会を行いました。ピザあるよって言ったらみんな来てくれるかなっていう安易な気持ちでピザを用意したらみんな来てくれました。ピザ用意するだけなのでちょろかったです

ただ、目標が漠然としすぎていてメンバーは今から自分たちがどんなロボットを作って活動していくのかのイメージがつかず、モチベーションが高いとは言い難い状況でした。

EV3

ピザ会議の時に、モチベーション向上のためにやっぱり動く実物が必要ということを悟ったので、手っ取り早く動かせるEV3をRoot41時代の元相方のハジメに借りに行きました。ライントレースのコースを印刷して「これに沿って動くプログラム作ってみてよ」って言いました。基本的に指導はしない方向で手探りでいじってもらいました。

それなりに楽しんでいたのでモチベーション維持の観点で一定の効果はあったかなという感じです。


自走組織

この頃から重視していたのが、メンバーそれぞれが自走できるチームの育成です。僕が司令塔になりあれやれこれやれって言って開発が進むのは面白くないし、リポ監視員育成コースは避けたい思いがありました。

メンバーには人に質問してばかりではなく、自分でインターネット上で調べて解決する力をつけてもらいたいと思っていました。ただ勝手にやっとけって突き放すのも組織としてよくないので、Discordに参考になりそうなリンクをいくつか貼る程度の補佐をしました。

本当に助けが必要そうな時は介助してましたが、「ちょっと調べればすぐわかるやろ」みたいな質問の時は「今忙しいから調べて自分で解決して、すまん」みたいな演技して返してました。ちょっと胸が痛かったですが、ここで介助してばかりだと後々組織として成り立たなくなるのでキャプテンの役割だと割り切って冷たい対応をとることもありました。

ただ、調べて何か達成してた時にはめっちゃ褒めまくりました。大きなタスクを小さなタスクに分割して考えるという第一歩なので、進捗の大小に関わらず評価することは心がけました。

進捗を見せる

ハードウェア設計は進捗が見えやすいので、自分がハードウェアの設計を爆速で進めて、CADのスクショをDiscordに貼ったりして「俺は進捗産んでるよ、みんなはどう?」みたいな空気感に持っていこうとしてみたりしました。

しかしメンバーそれぞれが何をすればいいのかが明確になっていない状況でそれをやってしまい、一人で爆走している変な奴みたいになってしまったのであんまり効果がなかったかもしれません。また自分がハードウェアをやりすぎてしまったことで、機械好きのsetukaの仕事を奪ってしまったのも良くありませんでした。

実物を見せまくる

11月ごろからロボットがCADの向こうの存在ではなく、現実の部品となって現れるようになってきました。

寮生という特性をなんとか活かせないかと考え、自分がハードウェアの進捗が生まれたら(光った、動いた等)メンバーの部屋に突撃してみたりしました。距離センサの円形LEDができた時とかは「うぉーすげぇ光ってる」みたいな感触を得られたので多少の効果はあったと思います。

ルンバボー引退

ルンバボーが学業が忙しくなったとのことでチームを抜けることになりました。自分もルンバボーに上手く役割を振れなかったりなど思うところもいくつかありましたが、彼の考えを尊重することにしました。

餅にゃむ参戦

隣の部屋で普段から仲良くしていた餅にゃむに勢いで「Blendやってみない?」って言ったらやるって言われたので餅にゃむが加入しました。まさか本当にやるって返事が返ってくるとは思わなかったのでびっくりしました。

進捗スタンプラリー

ブロック大会が目前に迫ってきた時期のことです。

GitHubにコミットに応じて芝が塗りつぶされていくという機能があります。それを利用してスタンプラリーみたいにすることで開発を習慣化できないかなとおもいつきました。

思っていたより感触が良く、一日一分でもメンバーが開発してくれるようになりました。一旦習慣化されたものはなかなか離れないので、かなりいい取り組みだったと思います。

サステナブルデスマーチ

やらされる開発が長く続くとそれはただのブラック活動です。とある組織のトップがやる気ありすぎてブラック化した結果、人材が離れていって崩壊するという一連の出来事を丁度目の当たりにしたところだったので、それは避けたいと考えていました。

ただ正直なところ、ブラックな開発(=デスマーチ)に耐えられる人材が欲しいのも事実です。ブラック化は避けたいがブラックに耐えられる人材が欲しい。相反しているようですが、RCJをガチでやっていくためには少なからず必要な要素だと思います。

どれだけの作業量に耐えられるのかを測るために、一度メンバーに作業量の負荷を一時的に強くかけてみました。そこで、それぞれが楽しみながら捌けている作業量の限界値を観察しました。

ここで初めて気づいたのが、それぞれが耐えられる作業負荷はかなり異なるということでした。これに気づけたことで、メンバーそれぞれにかける作業負荷をコントロールできるようになりました。

RCJコミュニティー

TwitterとかでRCJのコミュニティーにメンバーを巻き込もうと試みました。岐阜ブロック大会では、実際にサッカー勢の皆さんと会ってもらったりロボットを見せてもらったりして、RCJ特有の空気感やノリを感じてもらいました。

岐阜ブロックは特にブロック内の仲がいい(普段から敵というより友達感覚)ので、緊張がほぐれて良かったと思います。

RCJのDiscordサーバーに誘ってみたりしたのもこの頃です。

試験週間とやる気低下

色々試したりしてやる気が盛り上がってきた時に毎回くるものといえば試験週間です。

年4回あり、それを乗り越えないと留年の文字がチラつくので流石に「試験よりロボット!!試験は捨てよう!!」みたいなことを言うわけにはいきません。留年・落単の可能性があるのは僕も同じです。

2月にも試験週間があり、今から全国大会に向けて開発を加速していきたいと思ったところだったのでかなり痛手でしたが仕方がないといえば仕方がないです。

危機感の共有

3月に入ってまず最初に行ったのが危機感の共有です。

YouTubeに上がっている他ブロックの動画を見せて「あのチームめっちゃ動いてるよ!?凄すぎぃ!!でも俺ら何もできないよぉ、やばくね?」みたいなことを無限に呟いて、チーム内に「このままでは勝てない」という空気感を作ってみました。

他にも、去年の出場チームのプレゼンシートを見せたりして、自分たちの技術がまだ全然レベルが低いということを認識させました。ハードウェアがカッコ良くても試合には勝てないということを強調して伝えました。

結果チームに「高専生が高校生に技術力で負けてたまるか!!」みたいな雰囲気が生まれ、士気がかなり高まったのでかなり効果があったと思います。

マツケン

この頃はメンバー全員で共通に話せる話題が「○科の××が留年したらしい」くらいしかありませんでした。会話もあまり盛り上がらず静かな開発が続いていました。

開発環境が静かすぎると、何かうまくいかなかった時に気持ちがずーんと沈んでいきがちです。RCJ参加者ならこの負の空気感を一度は感じたことがあると思います。

なんとか解消したいなと思っていた矢先、餅にゃむが偶然マツケンサンバを流し始めたので「ワンチャンある!」と思い、チーム全体をマツケンで洗脳してみました。なんだかんだで流行りました。みんなが歌詞をある程度覚えるくらいには浸透しました。というより上様の曲が全部神曲すぎました。

ここまできたら、マツケン一本で行くしかないのでBlendのLINEグループのアイコンをマツケンにしたり、Discordにマツケン専用チャンネル作ったり、ロボットのブザーから暴れん坊将軍流してみたりと徹底してやってみました。

冷静に分析してみれば、共通の話題ができたことと、士気が(強制的に)上がる環境に持っていけたことで良い結果につながったのではないかと感じています。

マツケンに限らず、チーム内で共通の話題を持っておき、みんなで一緒に盛り上がっていくというのは組織運営においてとても大切なことかもしれません。いい意味で理性を失えたのではないかと思います。


今やらないと後悔する

大会期間中に僕がずっと言ってたのが「今気を抜いて負けたら後々絶対後悔する」ということです。やっぱり優勝したかったですし、仮に優勝できなくても後悔するようなことは避けたかったです。

やれるだけのことはやってきた自負があったので、最後の最後で精神論カードを切ってみました。

その気持ちがメンバーにも伝わって、調整日のバンプすら超えられない絶望的な状態から優勝までよじ登ることができたのだと思います。今後の活動においてもこの気持ちは大切にしていきたいです。精神論カードはやっぱり最初から切るものではなく、最後の最後まで取っておくべきですね。

おわりに

この一年で、メンバーそれぞれがスキルを発揮できるチームに仕上がったことはとても素晴らしいことだと思います。

Blend発足当初から願っていた、一極集中しないそれぞれが自走する組織に育ったのはこの上ないことです。あくまで僕はマネジメントをしてきただけで、最終的にはメンバーそれぞれが頑張ってくれたからこそのこの結果だと思います。

Blendメンバーへ、一年間頑張ってくれてありがとうございましt…とかいうと多分嬉しくなって舞い上がっちゃうので世界大会優勝までは言わないことにしておきましょう()

今日から新学期が始まります。部活などで参加しているチームは、新入生の教育などにそわそわし始めている時期ではないでしょうか。もし、誰かに一極集中することなくメンバー全員が「開発」をして新規開拓ができる組織を目指しているなら、この記事が少しでも役に立てばと思います。

では、また来年度の全国大会で皆さんの強いロボットに出会えることを楽しみにしています。


追伸: みんなマツケン聞くとロボットも動くようになるし、部屋の片付けも一瞬で終わるし、テンション爆上がりで最高ッゥゥウウだぞぉ!みんなもマツケン聞こう!!!オレ!オレ!オレ!オレ!オレ!オレ!オレ!オレ!!!!!マツケンマツケンマツケンマツケンマツケンマツケンm

しろくま胡瓜


  

しろくま胡瓜

日本のまんなからへんでロボット作ったり旅したりしてる白熊です。吠えたり噛みついたりしないから仲良くしてね。

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