CAE入門 -静的応力編-
Note 2022/05/06:
これは前ブログからの移行記事です。一部表現や文体の調整を行った箇所がありますがご了承ください。
こんにちは。しろくま@胡瓜です。今日はCAEについて語っていきたいと思います。
諸注意
この記事はFusion360のシミュレーション機能を少し触ってCAEとはどういうものなのか理解してみようという趣旨の記事です。自分自身もシミュレーションについて詳しい知識を持っているわけではないので内容や表現の正確性については保証しかねます。また、誤りなどがあった場合DMなどで教えていただけると幸いです。
CAEとは
実際に部品を作る前にコンピュータに事前にシミュレーションさせて強度とか熱とか色々解析するツールです。。僕はめんどくさいのでキャエと読んじゃいますが、シーエーイーって読む人の方が大多数だと思われます。
よくわからないと思うので実際の画像をいくつかお見せします。「あーなるほどあいつか」ってなるんじゃないでしょうか。
上の画像が静的応力解析、下のやつが熱解析ってやつです。今回は一番説明が楽そうでかつよく使う静的応力解析を扱います。
静的応力 is 何
応力っていうのは物体の断面積あたりにかかる力のことです。静的応力とは静かに力を加えたときにどんだけ部品にどんだけ力がかかるかなっていうものです。この応力によっては部品が変形したり、壊れたりします。Fusion360では構造荷重および拘束によるモデルの変形と応力を解析できます。
ちなみに応力は断面積分の力です。単位はラスカルパスカル(Pa)です。
やってみる。
今回はこちらのの3秒ぐらいでモデリングしたフックみたいな部品をご用意しました。素材はA7075を想定します。画像だとサイズが伝わりにくいと思うので隣にお馴染みの寛永通宝を置いておきましたので、お手元の財布の中の寛永通宝と比較してみてください。
今回はこの部品にある2個の穴をネジで固定し、先っちょの方の平たくなってるところにぐいぐい負荷をかけると想定します。
まずはFusion360のワークスペースをシミュレーションに切り替えます。するとなんかダイアログが出てくるので静的応力を選択します。
構造拘束
まずはネジ穴の部分を固定したいので構造拘束を設定していきます。
ネジ穴の面2つを選択してOKを押します。
これでネジ穴を固定することができました。いい感じです。
荷重を設定
果汁じゃないです。荷重です。イタイイタイヤメテ!!イシヲナゲナイデ!!
構造荷重を選択し、次に荷重を加える面を選択します。そして何Nの力を加えるかを設定します。今回は試しに20N(≒2kgf)を設定してみます。
これで解析の準備は完了です。解析ボタンを押して実際に解析してみましょう。クラウドもローカルでもお好きな方をお選びください。複雑な解析になるとスペック的に必然的にクラウドを選択する必要が出てくると思いますが、この程度だったらどっちでもかまいません。今回僕はローカルでやりました。クラウドでもローカルでもどちらでも最終的に得られる結果は変わりません。
結果を見てみる
解析が終わったら結果を覗いてみましょう。楽しみですね。
安全率
ここでは安全率が示されています。安全率とは許容される応力と実際にかかる応力の比です。
安全率が1の場合ギリギリ負荷に耐えている状態で、安全率が1を下回るとその部品は負荷に耐えられずにぶっ壊れます。逆に安全率が増えていくとその部品はより余裕を持って負荷に耐えることができます。
これをみる限り最小安全率が4.05なので壊れる心配はなさそうです。ちなみにエレベータなど人命に関わるようなところだと安全率10以上で設計されたりするそうです。
応力
次に応力を見ていきます。
これをみる限り根本の部分に最大35.82MPaの応力が加わっていることがわかります。また、部品の縁の部分に比較適応力が集中していることがわかります。
補足
シミュレーション結果では部品が変形して表示されているので「こんなに変形したら使い物にならぬ」と思われがちですが、実際の変形が小さすぎる場合に歪みを把握しにくいので誇張して表示されてるだけなのでご安心ください
改善していこう
解析して壊れるか壊れないか試しておしまい。だとせっかくの解析を活かしきれていません。せっかくなのでこれを元に部品を改善していきましょう。
さっき応力が集中してた部分にフィレットを多めにかけてみたり…
逆に先ほど応力があまりかかってなかった部分は大胆に肉抜きしてフィレットをかけてみたりしました。こういう肉抜きの時は三角形に抜くようにすると強度を保ったままうまく肉抜きできることが多いです。
肉抜きにより約15%も質量を減らすことができました。さて肝心の強度はどうなったでしょうか?もう一回解析をかけてみます。
最小安全率がが4.69と先ほどの4.05と比べて向上しましたね。続いて応力も見ていきます。
先ほど応力が集中していた部分に思いっきりフィレットをかけたことによって応力を分散できているのがわかります。ここからフィレットには負荷が集中することを防ぐ効果があることがわかります。旅客機の窓が円い形状をしているのはこのためです。
これをみる限り、今度は肉抜きしたところの角の部分に応力が集中しちゃったのでそこにさらにフィレットを強めにかけてもいいかもですね。解析なんて使って減るものではないので何回でも使いまくって改善していきましょう。
まとめ
今回は文より図メインの記事にすることで直感的なわかりやすさを目指してみました。ロボットなどを作る際にこういった解析ができると勘に頼らずに壊れにくい設計をすることができるようになります。
また、この例のように部品を実際に製作する前に形状の改善を図ることもできます。勘もある程度役に立ちますが、勘だけに頼るのはちょっと危険です。
というロボット製作で一番よく使うと思われる静的応力解析についてざっとではありますが軽く説明してみました。質問等あればお気軽に聞いてください。わかる範囲で答えます。
大事なロボットの設計を勘だけに頼るのやめませんか?
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